
定年後のタクシー運転手は、年金と給与を併用して「無理なく働き、ゆとりある暮らし」を実現しやすい仕事です。
2026年4月から在職老齢年金の基準額が月65万円に引き上げられ、年金が減りにくくなりました。
この記事では、年金の受給開始年齢と繰上げ・繰下げの基本、年金×タクシー収入の組み合わせ方、首都圏で定年後にタクシー運転手を始める流れまでをわかりやすく解説します。
定年後にタクシー運転手が選ばれる理由
60歳・65歳で定年を迎えたあと、「年金だけでは少し心もとない」「まだ体は元気なので社会とつながっていたい」と考える方は少なくありません。そうした方の再就職先として、タクシー運転手は根強い人気があります。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにした集計では、タクシー運転者の平均年齢は全国で60歳前後とされ、他業種と比べてシニア世代が主力として活躍している職業です。首都圏でも「60代・70代活躍中」を掲げる求人は珍しくありません。
定年後にタクシーが向いている主な理由
- 年齢より「安全運転」と「接客」が評価される:前職の業種を問わず、社会人経験がそのまま活きます。
- 二種免許の取得を会社が支援する求人が多い:未経験からでも始めやすい環境があります。
- 勤務形態を選べる:昼日勤・定時制など、体力や生活リズムに合わせた働き方ができます。
- 一人で乗務する時間が長い:職場の人間関係に縛られにくく、自分のペースで働けます。
- 首都圏は需要が厚い:人口・ビジネス・観光の需要が集中しており、配車アプリの普及で空車時間を減らしやすくなっています。
まず押さえたい年金の基本|受給開始年齢と繰上げ・繰下げ
年金と併用して働くプランを考えるには、まず「いつから、いくら受け取るか」を決める必要があります。
老齢基礎年金・老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取れます。
ただし、受け取り開始の時期は自分で前後にずらすことができます。
| 受け取り方 | 開始できる年齢 | 年金額への影響 |
|---|---|---|
| 繰上げ受給 | 60歳〜64歳 | 1か月早めるごとに0.4%減額(生涯続く) |
| 原則どおり | 65歳 | 本来の年金額 |
| 繰下げ受給 | 66歳〜75歳 | 1か月遅らせるごとに0.7%増額(75歳で最大84%増) |
※繰上げの減額率0.4%は1962年4月2日以降生まれの方、75歳までの繰下げは1952年4月2日以降生まれの方が対象です。
詳しくは日本年金機構の案内をご確認ください。
タクシーで働いて生活費をまかなえる期間がある方は、年金を繰下げて将来の受取額を増やすという選択も取りやすくなります。
「働けるうちは給与中心、体力が落ちてきたら増額された年金中心」という二段構えのプランです。
この章のポイント
- 年金は原則65歳から。60〜75歳の間で開始時期を選べる
- 繰下げると1か月0.7%増額。タクシー収入がある期間は繰下げを検討しやすい
- 繰上げは減額が生涯続くため、慎重に判断する
2026年4月改正|在職老齢年金の基準額が65万円に
「働くと年金が減らされる」と心配される方が多いのが、在職老齢年金の仕組みです。
厚生年金に加入しながら働く場合、賃金(ボーナス含む年収の12分の1)と老齢厚生年金の月額の合計が基準額を超えると、超えた分の半額が老齢厚生年金から支給停止されます。
この基準額は2026年3月までは51万円でしたが、2026年4月(令和8年度)から65万円に引き上げられました。
なお、減額の対象は老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は全額受け取れます。
| ケース(仮定) | 賃金の月額 | 老齢厚生年金の月額 | 合計 | 年金の減額 |
|---|---|---|---|---|
| 昼日勤・週3〜4日 | 18万円 | 10万円 | 28万円 | なし(全額受給) |
| 隔日勤務・フル乗務 | 35万円 | 10万円 | 45万円 | なし(全額受給) |
| 高収入ケース | 60万円 | 10万円 | 70万円 | (70万−65万)÷2=2.5万円が停止 |
※金額はいずれも仕組みを説明するための仮定の数値で、実際の給与・年金額を示すものではありません。
基準額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。
一般的なタクシー乗務の収入と年金の組み合わせであれば、基準額の65万円を下回るケースが多いと考えられます。
「年金を減らされないように勤務を抑える」必要性は、改正前よりかなり小さくなったといえます。
さらに、65歳以上70歳未満で厚生年金に加入して働く場合は、在職定時改定により毎年1回、納めた保険料が年金額に反映されます。
働きながら年金が少しずつ増えていく点も、定年後に働く大きなメリットです。
この章のポイント
- 在職老齢年金の基準額は2026年4月から65万円(令和8年度)
- 減額されるのは老齢厚生年金のみ。老齢基礎年金は減らない
- 65〜69歳は在職定時改定で毎年年金額が増える
年金×タクシー収入で描く「理想の暮らし」3つのモデル
年金とタクシー収入の組み合わせ方に正解はありません。
ここでは、定年後によく選ばれる考え方を3つのモデルで紹介します。
金額は目安をイメージするための仮定で、実際の収入は会社・勤務形態・営業成績によって大きく変わります。
モデル1|ゆとり重視型「年金+週3〜4日の昼日勤」
年金を生活の土台にし、昼間だけ週3〜4日乗務するスタイルです。
夜は自宅でゆっくり過ごし、休日は趣味や旅行、孫との時間に充てられます。
「年金だけでは足りない分をタクシーで補い、毎月の旅行や趣味の予算をつくる」という使い方に向いています。
モデル2|しっかり稼ぐ型「年金+隔日勤務」
1回の乗務時間は長いものの、明け番と公休があるため出勤日数は月11〜12日程度が一般的です。
まとまった収入と自由な日数の両方を確保でき、住宅ローンの繰上げ返済や老後資金の上積みを目指す方に選ばれています。
体力と相談しながら、年齢に応じて日勤へ切り替える会社もあります。
モデル3|将来に備える型「タクシー収入で暮らし、年金は繰下げ」
65歳以降もタクシー収入で生活費をまかない、年金の受け取りを遅らせて増額させるプランです。
たとえば70歳まで繰下げれば、年金額は42%増えます。
「元気なうちはしっかり働き、70代後半以降は増えた年金で安心して暮らす」という、長寿時代に合わせた設計です。
モデルを選ぶときのチェック項目
- 毎月の生活費と、年金でまかなえる金額はいくらか
- 夜間の乗務が体力的に可能か
- 住宅ローン・家族の支援など、今後の大きな支出はあるか
- 何歳まで働きたいか(会社の定年・再雇用の上限と照らし合わせる)
ご自身の年金見込額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。
タクシーでどれくらい稼げるかのイメージをつかみたい方は、タクシー運転手の勝ち組とはどんな人?も参考にしてください。
まずは、登録してみよう!「情報収集」という段階でもどうぞ
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60代・70代に合う勤務形態の選び方
首都圏のタクシー会社では、主に次のような勤務形態があります。用意されている形態や時間帯は会社ごとに異なるため、応募前に確認しましょう。
| 勤務形態 | 特徴 | 定年後に向いている人 |
|---|---|---|
| 昼日勤 | 朝から夕方〜夜まで乗務。生活リズムが崩れにくい | 体力面を重視したい人、夜は家で過ごしたい人 |
| 夜日勤 | 夕方から深夜・早朝まで乗務。深夜割増で単価が上がりやすい | 夜型の生活に慣れている人 |
| 隔日勤務 | 1回の乗務が長く、翌日は明け番(休み)。出勤日数が少ない | 収入を重視し、まとまった休みも欲しい人 |
| 定時制(パート) | 勤務日数・時間を抑えて働ける | 年金を土台に、補う程度に働きたい人 |
※勤務時間・日数の詳細は会社や営業所によって異なります。
定年後は「稼げる勤務」だけでなく、何年続けられるかという視点で選ぶことが大切です。長く続けるための心構えについては、タクシー運転手に向いてる人はメンタルが強く、すぐに辞めないで詳しく解説しています。
首都圏で定年後にタクシー運転手を始める流れ
未経験から首都圏でタクシー運転手になる一般的な流れは次のとおりです。
- 会社選び・応募:勤務形態、二種免許の費用負担、定年・再雇用の上限年齢を確認します。
- 普通第二種免許の取得:受験資格は21歳以上で、普通免許等の保有期間が通算3年以上であること。入社前後に会社負担で取得できる求人が多く見られます。
- 法定講習・研修:東京の特別区・武三地区など一部の地域では、乗務に必要な講習や試験があります。接客や配車アプリの操作も研修で学べます。
- 先輩ドライバーの同乗研修を経て独り立ち:最初は無理のない勤務から始め、慣れてきたら勤務日数を調整します。
首都圏の求人は東京のタクシー求人一覧から探せます。
定年後に働くうえでの注意点
事前に確認しておきたいこと
- 健康管理:乗務前の点呼や健康診断があります。持病がある方は主治医とも相談しましょう。
- 高齢運転者の免許更新:70歳以上は高齢者講習、75歳以上は認知機能検査が免許更新時に必要です。
- 会社の定年・再雇用の上限:何歳まで乗務できるかは会社ごとに異なるため、求人票で必ず確認します。
- 税金・社会保険:給与と年金の両方がある場合、確定申告が必要になることがあります。厚生年金は70歳まで加入し保険料を納めます。
- 60〜64歳の方:60歳時点より賃金が75%未満に下がった場合、雇用保険の高年齢雇用継続給付の対象になる場合があります(2025年4月以降に60歳になった方は最大で賃金の10%)。
よくある質問
Q. タクシーで働くと年金は減らされますか?
減額の対象になるのは老齢厚生年金のみで、賃金と老齢厚生年金の月額の合計が基準額(令和8年度は65万円)を超えた場合に、超えた分の半額が支給停止されます。
老齢基礎年金は減額されません。
一般的なタクシー乗務の収入と年金の組み合わせであれば、基準額を下回るケースが多いと考えられます。
Q. 60代・70代の未経験でもタクシー運転手になれますか?
普通第二種免許の受験資格(21歳以上、普通免許等の保有期間3年以上)を満たしていれば年齢の上限はありません。
首都圏では二種免許の取得費用を会社が負担する求人も多く見られますが、採用年齢や定年・再雇用の上限は会社ごとに異なるため、求人票で確認が必要です。
Q. 年金は繰下げたほうが得ですか?
繰下げると1か月あたり0.7%増額され、最大75歳まで(最大84%増)繰下げられます。
タクシー収入で生活費をまかなえる期間は繰下げを検討する余地がありますが、受給総額は受給期間によって変わるため、健康状態や家計に応じて年金事務所などで相談したうえで判断してください。
Q. 定年後に向いている勤務形態はどれですか?
体力面を重視するなら昼間のみの昼日勤や、勤務日数を抑えた定時制(パート)が選ばれやすい傾向です。
収入を重視するなら隔日勤務も選択肢になります。会社によって用意されている勤務形態が異なるため、応募前に確認しましょう。
Q. 働きながら年金を受け取ると、年金額が増えることはありますか?
65歳以上70歳未満で厚生年金に加入して働く場合、在職定時改定により毎年1回、それまでに納めた保険料が年金額に反映されます。
働き続けることで老齢厚生年金が少しずつ増える仕組みです。
年金とタクシー収入の併用で、定年後の暮らしに選択肢を
この記事のまとめ
- 定年後のタクシー運転手は、シニアが主力として活躍する仕事で未経験からも始めやすい
- 年金は原則65歳から。繰下げれば1か月0.7%ずつ増額できる
- 2026年4月から在職老齢年金の基準額は65万円に。年金を減らされにくくなった
- 「ゆとり型」「しっかり稼ぐ型」「繰下げ型」など、暮らし方に合わせてプランを選べる
- 勤務形態・定年や再雇用の上限・二種免許の費用負担は会社ごとに確認する
年金だけに頼るのでも、無理をして働くのでもなく、年金とタクシー収入を組み合わせることで、趣味も旅行も家族との時間も大切にできる定年後の暮らしをつくることができます。
自分に合う会社や勤務形態がわからない方は、まずは気軽に相談してみてください。
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※本記事の年金制度に関する情報は、2026年9月30日時点で日本年金機構・厚生労働省が公表している内容をもとにしています。年金額や基準額は年度ごとに改定されるため、最新情報や個別のケースについては日本年金機構・お近くの年金事務所でご確認ください。記事内の給与・年金額は説明のための仮定であり、実際の収入を保証するものではありません。
最終更新日:2026年9月30日




