
タクシー運転手をすぐ辞めても、またタクシーに戻る人が多いのは「二種免許が手元に残る」「歩合給なので会社を替えても不利になりにくい」「年齢を重ねても賃金が下がりにくい」という仕事の構造があるからです。
そして多くの場合、合わなかったのは「タクシーという仕事」ではなく「最初の会社や勤務形態」だった、というケースが少なくありません。
この記事では、再就職する理由を公的データとあわせて整理し、2回目で失敗しないための会社選びと面接での伝え方を解説します。
「すぐ辞めたのに、またタクシー」はよくあること?
タクシー業界では、一度辞めた人が別のタクシー会社に入り直したり、以前の会社に戻ったりする話は珍しくありません。ただし、出戻りや再就職の人数を示す公的な統計は公表されていないため、「何割が戻る」とは言えません。
それでも、業界の特徴を示すデータはあります。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」を全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)が集計した資料では、タクシー運転者の平均勤続年数は8.3年で、全産業平均の12.7年より短くなっています。中途入職が中心であることに加え、同じ業界の中で会社を移る人が一定数いることも、勤続年数が短く出る一因と考えられます。
この章のポイント
- 出戻り・再就職の人数を示す公的統計はない
- タクシー運転者の平均勤続年数は8.3年(全産業12.7年)
- 「会社を替えながらタクシーを続ける」働き方は業界では一般的
辞めてもタクシーに戻る6つの理由
理由1:二種免許は辞めても消えない「自分の資格」
タクシーの乗務に必要な第二種運転免許は、会社ではなく本人が持つ運転免許です。会社を辞めても失効せず、更新を続けていれば取り直す必要はありません。取得には教習の時間と費用がかかるため、すでに持っていること自体が大きな強みになります。
さらに、東京などで必要だった地理試験は2024年2月の省令改正で廃止されました。新しい会社では運転者登録や新任研修を改めて受ける必要がありますが、以前より再スタートのハードルは下がっています。登録の手続きは、入社予定の会社と登録実施機関(東京23区・武三地区なら東京タクシーセンター)に確認しましょう。
理由2:歩合給なので、会社を替えても「振り出し」になりにくい
一般的な会社員は、勤続年数に応じて給与が上がる年功型の賃金が多く、転職すると経験がリセットされがちです。一方タクシーは歩合給が中心で、全タク連は「経験年数に応じて賃金が段階的に上昇する仕組みは一般的に取り入れられていない」と分析しています。
| タクシー運転者の経験年数 | 年間賃金推計額 |
|---|---|
| 0年 | 371万円 |
| 1〜4年 | 418万円 |
| 5〜9年 | 407万円 |
| 10〜14年 | 392万円 |
| 15年以上 | 347万円 |
※出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月)。全国平均値。経験年数が長い層は年齢が高く勤務形態が変わる人も多いため、経験の長さだけで賃金が下がるわけではありません。
経験1〜4年の層がもっとも高いことからもわかるように、タクシーは短期間で「稼げる水準」に届きやすい仕事です。前の会社で1年でも経験を積んでいれば、次の会社でもその経験をそのまま活かせます。
理由3:他の仕事に移って、収入と自由度の差を実感する
タクシーを辞めて別の業界に移った人が、改めて「タクシーの条件」を見直すケースもあります。全タク連の集計では、20〜24歳のタクシー運転者の年間賃金推計額は約483万円で、全産業の同年代(約361万円)を約122万円上回っています。
また、乗務中は一人で仕事を進められ、上司と常に顔を合わせることもありません。隔日勤務なら「明け休み」と公休を組み合わせて自由な時間を確保しやすいなど、時間の使い方の面でもタクシーを選び直す人がいます。
理由4:年齢を重ねても続けやすい
一般的な会社では60歳の定年後に再雇用となり、賃金が大きく下がることが多いです。タクシーは歩合給のため、年齢による賃金の落ち込みが比較的緩やかです。
| 年齢 | タクシー運転者 | 製造業 | 卸・小売業 |
|---|---|---|---|
| 55〜59歳 | 約481万円 | 約666万円 | 約701万円 |
| 60〜64歳 | 約440万円 | 約479万円 | 約520万円 |
| 65〜69歳 | 約379万円 | 約368万円 | 約361万円 |
| 70歳〜 | 約348万円 | 約317万円 | 約325万円 |
※年間賃金推計額。出典:同上(全タク連集計)
65歳以上ではタクシー運転者の推計額が製造業や卸・小売業を上回ります。
「別の仕事に移ったが、定年後の働き口としてタクシーに戻る」という選択が合理的になりやすいのはこのためです。
理由5:合わなかったのは「タクシー」ではなく「会社」だった
同じタクシーでも、会社によって条件は大きく違います。
- 賃金体系:固定給の割合、歩合率、足切りの有無、給与保証の期間
- 勤務形態:隔日勤務・日勤・夜勤の選択肢
- 営業環境:配車アプリや無線の件数、法人契約、営業区域
- 職場環境:研修の手厚さ、営業所の雰囲気、事故やクレーム時のフォロー
「隔日勤務が体に合わなかった」「給与保証が終わった途端に収入が下がった」といった理由で辞めた人が、条件の違う会社に移って長く続くケースは多く見られます。
理由6:東京は売上環境が改善している
東京ハイヤー・タクシー協会の資料では、23区・武三地区の日車営収(実働1日1車あたり運送収入)は、コロナ禍の令和2年度に38,011円まで落ち込んだ後、令和7年度には62,731円まで回復しています。2026年4月20日には運賃改定も実施されました。コロナ禍で業界を離れた人が、環境の改善を見て戻ってくる動きもあります。東京の現状は「タクシー転職で東京だけが違う理由」で詳しく解説しています。
この章のポイント
- 二種免許は個人の資格で、辞めても取り直し不要
- 歩合給中心のため、会社を替えても経験が無駄になりにくい
- 高齢層ほど他産業との賃金差が縮まり、65歳以上では上回る
- 「会社選び」を変えれば続けられる人が多い
すぐ辞めてしまう人に多い理由
再就職で同じ失敗を繰り返さないために、まずは短期離職の原因としてよく挙げられるものを確認しておきましょう。
- 給与保証が終わって収入が下がった:入社後の一定期間は保証給がある会社が多く、終了後に歩合だけになると落差を感じやすい
- 隔日勤務の長時間乗務がきつかった:1回の乗務が長く、生活リズムが合わない人もいる
- 道や営業のコツがわからず売上が伸びなかった:地理試験の廃止で入りやすくなった反面、入社後の学習が必要
- 事故・クレームで自信をなくした:精神的な負担から早期に辞めてしまうケース
- 営業所の人間関係や社風が合わなかった:同じ会社でも営業所によって雰囲気が違うことがある
メンタル面の向き不向きについては「タクシー運転手に向いてる人はメンタルが強く、すぐに辞めない」もあわせてご覧ください。
再就職で失敗しないためのチェックポイント
2回目の会社選びで確認したいこと
- 前回辞めた理由を一つに絞り、その理由が解消される条件の会社を選ぶ
- 給与保証の金額・期間と、保証終了後の歩合率・足切りの有無
- 隔日勤務以外(日勤・夜勤)を選べるか、途中で変更できるか
- 配車アプリ・無線の件数など、経験が浅くても売上を作りやすい環境か
- 入社祝い金や免許取得支援の支給条件(一定期間の在籍が条件の場合が多い)
- 研修や同乗指導、事故時のサポート体制
なお、悪質な法令違反や重大事故でタクシー運転者の登録を取り消されると、一定期間はどの地域でも乗務できなくなります。処分歴がある場合は、再就職が可能な時期を事前に確認しておきましょう。
まずは、登録してみよう!「情報収集」という段階でもどうぞ
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面接で「前回すぐ辞めた理由」はどう伝える?
短期離職の経験は、隠すよりも正直に伝えた方が評価されやすい傾向があります。ポイントは次の3つです。
- 事実を簡潔に:「隔日勤務の生活リズムが合わず、半年で退職しました」
- 学んだことを添える:「乗務自体は好きで、アプリ配車を中心に売上を作るコツは身につきました」
- 次は続けられる根拠を示す:「御社は日勤を選べるため、長く続けられると考えて応募しました」
前の会社の悪口にならないよう、「条件が合わなかった」という表現にとどめるのが無難です。
よくある質問
Q. タクシー会社を短期間で辞めると再就職で不利になりますか?
A. 短期離職そのものより、辞めた理由と次の会社で続けられる根拠を説明できるかが重視される傾向があります。事故歴や行政処分の有無は確認されることがあるため、正直に伝えたうえで改善策を話せるよう準備しておきましょう。
Q. 一度辞めたら二種免許は取り直しが必要ですか?
A. 二種免許は本人の運転免許なので、会社を辞めても失効しません。更新を続けていれば取り直しは不要です。ただし新しい会社で運転者としての登録や研修は改めて必要になるため、手続きは入社予定の会社に確認してください。
Q. 前と同じタクシー会社に出戻りすることはできますか?
A. 再雇用を受け入れている会社もありますが、方針は会社ごとに異なります。退職時の経緯や在籍時の勤務態度が判断材料になることが多いため、直接問い合わせるか転職相談で確認するのが確実です。
Q. タクシーは経験年数が長いほど給料が上がりますか?
A. 全タク連の分析では、歩合給制度では経験年数に応じて段階的に賃金が上がる仕組みは一般的ではないとされています。そのため会社を替えても経験年数がリセットされて大きく不利になる、ということが起きにくい仕事です。
Q. 再就職先を選ぶときに一番確認すべきことは何ですか?
A. 前回辞めた理由に直結する条件です。収入が理由なら給与保証の期間と歩合率、体力が理由なら日勤・夜勤を選べるか、地理が理由なら研修や配車アプリの充実度を優先して確認しましょう。
まとめ
タクシーに再就職する理由の要点
- 二種免許は個人の資格。辞めても取り直し不要で、再スタートしやすい
- 歩合給中心のため、会社を替えても経験が無駄になりにくい(経験1〜4年層の推計年収が最も高い)
- 65歳以上では他産業より賃金が高く、長く働ける仕事として選び直されている
- 多くの場合、合わなかったのは「会社や勤務形態」。2回目は前回の離職理由を解消できる会社を選ぶ
- 業界の定着の実態は「タクシー運転手の離職率は高い?標準?」で解説しています
まずは、登録してみよう!「情報収集」という段階でもどうぞ
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参考資料
- 全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月):https://taxi-japan.or.jp/zius/wp-content/uploads/2026/05/令和7年度賃金構造基本統計調査.pdf
- 東京ハイヤー・タクシー協会「東京のタクシー2026」:https://taxi-tokyo.or.jp/assets/pdf/datalibrary/hakusyo2026all.pdf
- 国土交通省「地域交通における『担い手』『移動の足』不足への対応」(令和6年2月22日):https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaigi4/kaigi4_siryou3.pdf
- 国土交通省「タクシー運転者登録制度を全国に拡大します」(平成27年9月30日):https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000211.html
※本記事は2026年10月29日時点で公表されている資料をもとに作成しています。賃金は全国平均の推計値であり、個人の収入を保証するものではありません。再就職・再雇用の可否や登録手続きは各社・各登録実施機関にご確認ください。




